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望人境について 若き日、画家になるべく暗中模索、印象派の画家達に心酔、知性と感性の融合を計りながら油彩画探求日夜の精進であったが混迷は益々進み狂気じみた強迫観念の中自我の分裂に追い詰められ、日々その救済を願い、顔素描に明け暮れていた。 その涯というかいつしか幻想とも実在とも定まらぬ空間が視えてきて、夢と日常の境が定まらず意味なく墓地や廃墟に時として行くことがあった。なんだか安堵を得られその頃時々高熱に魘された。 そんなある日の床の中何かの声か突然姿見えぬ闇から鮮明で威厳のある響きで「あなたは望人境惠藤求と言います。」と告げられた。冷水を浴びたような、そして熱がひき安堵で霧が上がっていくような穏やかな空間不思議だった。其の情景は深山幽谷というか岩山の中腹に仏教的伽羅、庭には猿滑の巨木があり崖下は深い谷、真向かいの岩山には三尊仏が数々と薄暗い中黄金に照り返していた。 こう云う事が一般に言う啓示を受けたと言う事か、そんな気もして早速辞書で調べたが望人境という言葉は存在しなかった。しかしその言葉は後々私の総ての価値観の軸になっていった。 生と死と無。そして花。神秘とは何故美しくも恐れを孕んでいるのか。総ての現象真理がそこに帰着しているとも、平常感覚と幻視の対極、絵画を透してその根源にこだわり続けその裏に蠢く秩序を表現したく苦作苦闘。いつしか35年が過ぎていった。 イメージとマチエールの問題で長年悩んでいたが、クラフト紙に線描彩色画を描くようになりイメージが鮮明に出現、定着し、その一つは達したと思う。作者として望人境に対する必然なる論理解釈は私なりに熟知にあると思うが、言葉としての表現には封印を感じています。 2007年4月惠藤求 画家 |
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